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1-5:事業承継直後の一年で、社内の空気を壊さず変化を起こせる社長の共通点

事業承継から一年。

この期間の過ごし方で、その後の五年、十年が決まると言っても過言ではありません。社員との関係も、業績も、この一年の積み重ねの上に成り立っていきます。

実際に社内の空気を壊さず変化を起こせている社長には、いくつかの共通点があります。

目次

最初の三ヶ月は「決める」より「聴く」に使う

多くの社長は、就任後すぐに何かしらの成果を出したいと焦ります。周囲からも「二代目は何をしてくれるのか」という視線を感じ、その焦りはさらに強くなります。しかし、社内の空気を壊さず変化を起こせている社長ほど、最初の三ヶ月をあえて「決める」ではなく「聴く」に使っています。

ベテラン社員一人ひとりと時間を取り、これまでの苦労や、会社に対する率直な思いを聴く。この期間に急いで何かを変えようとせず、まずは信頼関係の土台を作ることに徹しているのです。話す内容そのものよりも、時間を割いて聴く姿勢そのものが、社員には何よりのメッセージとして伝わります。

急がば回れという言葉通り、この地道な期間を経た会社ほど、後の変化がスムーズに進みます。逆に、この期間を省略していきなり施策を打ち出した会社ほど、後になって現場との溝に苦しむ傾向があります。

「先代」を否定せず、むしろ活用する

社内の空気を壊す社長の多くは、無意識のうちに先代のやり方を否定するような言動を取ってしまいます。「今までのやり方は古い」という一言が、ベテラン社員の心を頑なにさせます。悪気がなくても、この種の一言は現場に想像以上の重みを持って伝わります。

一方、うまくいっている社長は、先代のやり方を尊重した上で、こう伝えます。「先代が築いてくれた土台があるからこそ、次のステップに進める」。

この一言があるかないかで、ベテラン社員の受け止め方は大きく変わります。過去を否定せず、その延長線上に未来を描くことが、変化を受け入れてもらう上で欠かせません。

小さな成功を、必ず全員に共有する

最初の一歩で小さな成功が生まれたとき、それをどう扱うかも重要な分かれ目です。会社によっては、この扱い方一つで、次の変化への協力体制がまったく違うものになります。

社内の空気を壊さない社長は、この成功を独り占めせず、必ず全員に共有します。「これは営業部長の協力があってこそでした」というように、成果を出した現場社員の名前を、社長自身の口から具体的に伝えるのです。

これにより、変化に協力した社員は「自分の貢献が認められた」と感じ、次の変化にも前向きに関わってくれるようになります。周囲の社員も、その様子を見て「うちの社長はちゃんと見てくれている」と感じるようになります。

逆に、成果を社長だけの手柄のように扱ってしまうと、協力した社員のモチベーションは一気に下がってしまいます。一度この経験をすると、次に協力を求めても、以前ほど積極的には動いてもらえなくなります。

この一年が、その後のすべてを決める

事業承継直後の一年は、社長にとって最も緊張感のある時期です。周囲からの期待とプレッシャーを一身に受けながら、社内の信頼をゼロから築き直していく時期でもあります。

しかし同時に、この一年での過ごし方が、その後何年にもわたる社員との関係性を決定づけます。ここで築いた信頼は、簡単には崩れない強固な土台になります。

聴くこと、先代を尊重すること、成果を共有すること。この三つを意識するだけで、老舗の会社でも十分に、社員から信頼される変化を起こすことができます。特別な才能や、大きな予算は必要ありません。

次章からは、いよいよ具体的な業務の洗い出し方に進んでいきます。属人化した知識をどう見つけ、どう整理していくのか、実践的な手順をお伝えしていきます。

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