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5-4:二代目社長が「自分の代でよくなった」と胸を張れる会社の姿

「先代の代の方が良かった」

こう言われることを、多くの二代目社長は密かに恐れています。口には出さなくても、心の奥底でこの不安を抱えている二代目社長は少なくありません。特に、社長になったばかりの頃は、この不安が日々頭をよぎることも珍しくありません。

しかし、変化を積み重ねた会社の先には、まったく逆の未来が待っています。

目次

比較されることへの恐れから、自信へ

事業承継直後の社長は、常に先代と比較される不安を抱えています。取引先からも、社員からも、無意識のうちに「先代ならどうしていたか」という視線を向けられることがあります。この視線は、時に本人が思う以上に重くのしかかるものです。誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう社長も少なくありません。

しかし、「聴くこと、選ぶこと、巻き込むこと」を積み重ねてきた会社の社長に対しては、この比較の視線が、いつしか違う形に変わっていきます。

「先代とは違うやり方だけど、これはこれで良い」という評価へと、少しずつシフトしていくのです。

「自分の代でよくなった」と感じる、具体的な瞬間

ある卸売会社の二代目社長は、就任から五年が経ったとき、長年勤めるベテラン社員からこう言われたそうです。

「正直、最初は不安だったけど、今の方が働きやすいよ」

事業承継の直後には、決して聞くことができなかった言葉でした。長年、心のどこかで求め続けていた言葉だったのかもしれません。

この一言は、経営者として最も重い言葉の一つだったと、社長は振り返ります。数字上の成果以上に、現場で働く社員からの率直な評価こそが、自分の代を肯定してくれるものだったからです。この言葉を聞いた瞬間、それまでの苦労が報われた気がしたといいます。

胸を張れる会社に共通する、三つの要素

「自分の代でよくなった」と感じられる会社には、共通した特徴があります。これは特別な会社だけの話ではなく、「聴くこと、選ぶこと、巻き込むこと」を積み重ねれば、どの会社にも訪れ得る姿です。

  • 属人化が解消され、誰かが抜けても業務が回る安定感がある
  • ベテラン社員と若手社員が、対等な立場で協力し合っている
  • 社員自身が、次の課題を自ら見つけて動くようになっている
  • 社長自身が、比較の不安から解放され、自分らしい経営を語れるようになっている

これらは、一朝一夕には手に入りません。しかし、地道な積み重ねの先に、確かに手にできるものです。焦らず一つずつ積み上げてきた社長だけが、この景色にたどり着けます。特別な才能ではなく、この積み重ねを続けられるかどうかが分かれ目になります。

「守る」と「変える」は、両立できる

この会社の社長は、先代のことを今もこう語ります。

「先代が築いてくれた土台がなければ、今の会社はなかった」

過去を否定せず、その延長線上に変化を積み重ねてきたからこそ、この言葉には嘘がありません。取ってつけたお世辞ではなく、心の底からの実感がそこにはあります。

「守る」ことと「変える」ことは、決して矛盾するものではありません。むしろ、正しく守りながら変えることでしか、二代目社長は本当の意味で「自分の代でよくなった」と胸を張ることはできないのです。この二つを両立させることこそが、老舗を継ぐ者に課された、最も本質的な役割だといえます。この役割を全うできたとき、社長自身の心にも、静かな充実感が訪れるはずです。

次の記事では、この一連のシリーズの締めくくりとして、社長がまず最初にすべきたった一つのことをお伝えします。

ここまでの全ての内容を、たった一つの行動に凝縮していきます。全五章にわたってお伝えしてきた内容が、最後にどう一つの答えへと収束していくのか、ぜひ確認してみてください。

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