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1-3:「若造がまた思いつきで」と言われる社長と、言われない社長は何が違うのか

同じように会社を変えようとしているのに、「また社長が思いつきで何か始めた」と冷ややかに見られるケースと、「今度は本気で会社を良くしようとしている」と受け止められるケースがあります。

その差は、社長の才能や人柄の問題ではありません。改革を切り出す前に、社長が何をしていたかという、ごくシンプルな順番の違いです。この違いを知らないまま提案を進めてしまうと、どれほど良い内容であっても、社内では「またか」という空気が先に立ってしまいます。

目次

「思いつき」と言われる社長がやっていること

「思いつき」というレッテルを貼られる社長には、共通したパターンがあります。

セミナーや本で得た知識をそのまま社内に持ち込み、現場の実情を確認しないまま「これからはこうします」と宣言してしまうのです。社員からすれば、自分たちの日々の苦労を知らない人間が、外から借りてきた正論を振りかざしているようにしか見えません。

しかも、こうした改革は往々にして長続きせず、数ヶ月後には立ち消えになります。一度この経験をした社員は、次に社長が何かを提案しても「どうせまたすぐ終わる」と本気で取り合わなくなってしまいます。厄介なのは、この不信感が一度積み重なると、正しい提案であっても色眼鏡で見られてしまうことです。

実際、複数回の失敗を経験した会社ほど、次の提案に対する現場の反応は冷ややかになりやすい傾向があります。

「今度は違う」と思われる社長がやっていること

一方で、社員から信頼される社長には、改革を打ち出す前に必ず行っていることがあります。

  • 現場に足を運び、実際の作業を自分の目で見ている
  • ベテラン社員一人ひとりに、日々の苦労や不満を直接聞いている
  • 聞いた内容を、提案の中に具体的な形で反映している
  • 「なぜそのやり方を続けてきたのか」という理由まで理解しようとしている

例えば、ある卸売会社の二代目社長は、AI導入を提案する前に、まず一ヶ月かけて全社員と一対一の面談を行いました。そこで出てきた「毎日の在庫確認に時間がかかりすぎる」という声を拾い上げ、「まずはここから改善します」と、社員の言葉をそのまま使って提案したのです。

社員たちは「自分たちの声がちゃんと聞かれている」と感じ、反発ではなく協力の姿勢を見せるようになりました。面談自体は一人あたり二十分程度でしたが、この時間を惜しまなかったことが、後の展開を大きく左右したといいます。実際に改善が始まってからは、面談で話を聞いてもらえた社員自身が、周囲に取り組みの意義を説明してくれる場面も見られるようになりました。

違いを生んでいるのは「順番」だけ

この二つの社長の間に、能力の差はほとんどありません。違うのは、提案を作る前に現場の声を聞いたかどうか、その一点だけです。

社員は、内容そのものよりも「自分の話を聞いてもらえたかどうか」で、社長への信頼度を決めています。逆に言えば、忙しい中でも現場の声を聞く時間さえ確保できれば、どんな社長でも「思いつき」ではなく「本気の改革」として受け止めてもらえる可能性が高まるということです。

時間がないことを理由に、この一手間を省いてしまう社長は少なくありませんが、実はこの一手間こそが、後の展開全体のスピードを左右する最も重要な工程なのです。急がば回れという言葉の通り、最初に現場の声を丁寧に聞いた会社ほど、その後の改革は驚くほどスムーズに進みます。

逆に、この工程を飛ばして進めた改革は、途中で必ずと言っていいほど現場の抵抗にぶつかり、結局は最初からやり直すことになります。

次の記事では、ベテラン社員が本当に何を恐れているのか、その本質にさらに踏み込んでいきます。

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